つぎの日。
カミナくんはいきようようと、きのうおそわったひみつきちへ急ぎます。
きょうはまだシモンくんに会っていませんが、きっとそこにいるはずだと思っていました。なんといってもあのばしょは、ふたりのひみつきちなんですから。
ふたりの、きち。ほかのこぶんと集まるひみつのばしょはいくつかありますが、それはブタモグラ農場のすみとか、そうこのタルのかげとか、大したばしょではありません。こんな本かくてきなきちははじめてです。それに、ふたりだけ、というのが気に入っていました。何人もが知っているひみつより、大事なひみつに思えます。
「シモン、いるかー!」
トンネルを抜けながら、待ちきれなくてさけびます。
でもへんじがありません。
走りこんだ穴の中は、しずかな池と、きのうのロープがそのままあります。シモンくんだけがいません。
「なんだ、あいつ今日はまだしごと終わってないのか」
シモンくんは昼まは村長さんのいいつけどおり、村をひろげるための横穴ほりのしごとをしています。(カミナくんもほんとうはやらなくてはいけないのですが、ほとんどやったことがありません)でも、みんなより穴ほりのうまいシモンくんは、夜のじかんがくるずっと前に、その日のうちのしごとを終わらせてしまえるのです。そのじかんをみはからってここにやってきたのですが、どうやらまだ早かったみたい。
カミナくんはきのう気にいったロープにまたすわります。ぶらーんぶらーん、ロープをゆらしていると、さいしょは楽しかったのですが、だんだん、はじめのときほど面白くなくなってきました。
「おせえなあ、シモンのやつ」
池のひょうめんがゆらゆらゆれて見えます。風はきもちよくかおにあたります。でも、いつまでもひとりでこいでいると、つまらないような気がしてきます。
そういえば、きのうシモンくんは、なんでとちゅうで帰ってしまったのでしょうか。
なんでかな。なんでかな。
そう思いながら、カミナくんはむやみにロープをゆらします。
けっきょく、その日は夜の時間が近くなっても、シモンくんはやってきませんでした。
またつぎの日です。
カミナくんはいらいらしながら、ひみつきちの中にいました。きょうも、シモンくんはここにいません。カミナくんはもう、ここに来てずいぶん待っているのです。
「・・・なんだよシモンのやつ。ふたりの、っていったじゃねえか」
池のはしにふてくされて寝ころがりました。いっそシモンくんをちょくせつ呼びに行こうかとも思いましたが、穴ほりをいつもさぼっているカミナくんとしては、穴ほりの仕事場にかおを出すことができません。
ちかの村はこえがひびくので、いつもみんなしずかに暮らしています。それでも人が住んでいる音やこえがどこにいても聞こえるものです。でも、この穴はびっくりするほどしずかで、なんの音もしません。池はあいかわらずぼうっと光っています。
ひとりじゃ、ほんとにつまんねえよ。
今日はロープをぶらぶらさせる気もおきません。池の上からぶら下がっているロープをながめていると、はじめてここに来た、おとといのことを思い出しました。
あのとき、シモンくんはとってもたのしそうにこのロープをゆらしていたのです。それがカミナくんのこころをひきつけて、どうしても乗りたくなって、かわってもらったのでした。
そういえば、あのあとおれはずっとロープに乗りっぱなしで。たしかシモンがかわって、ってたのんできたのに、ことわったんだ。
なんだかだんだん、自分のしたことがよみがえってきました。
このロープに乗ってるあいだじゅう、ずっとシモンのことをわすれて、遊んでた。シモンは、ずっとひとりでおれを待ってた。
------いまのおれと、同じじゃないか。
やっと、あの時なんでシモンくんが急に帰ってしまったのかが、わかったような気がしました。あいつも、こんなつまらない気もちだったのかな。カミナくんは、うー、とうなって頭をかきむしりました。
その時です。
トンネルの方からだれかがやってくる音がします。
「シモンか!?」
カミナくんは飛び起きました。これであやまれる、またここでふたりであそべる。そう思ってトンネルにかけよります。
「あー、やっぱりここにいたぞ、あにき」
「な、おれ見たって言ったろ?」
「なんだ、あにき、こんな広いところ知ってたなら教えてくれればいいのに」
どやどやと入ってきたのは、カミナくんのいたずら仲間(カミナくんとしてはこぶん)たちでした。
どうやら、きのうきょうとカミナくんがここにむかうのを、見られていたようです。(とくにきょうは、いらいらして人の目なんか気にせず歩いてきましたからとうぜんです)
こぶんたちは、カミナくんを押しのけて中に入っていきます。だれも知らないこんなばしょなんて、めったにありませんから、みんなこうふんして走りまわっています。
「すげー!水がある」
「村長も知らねえだろうな、ここは!」
「なんか光ってるぞ」
「ここマジで良い!すげえよ」
「あにき、いつものとこなんてやめて、ここを集合ばしょにしようぜ!・・・・あにき?」
穴のいりぐちに立っていたカミナくんが、いきなり足をどん!とじめんにたたきつけました。とつぜんのことに、そこにいるぜんいんがだまってしまいます。
「だめだ」
カミナくんはとてもおこっていました。
シモンくんとやくそくした、ふたりのひみつのばしょを、みんながかってにふみあらしたこと。なにより、それが自分のせいだということ。自分のふちゅういで、このばしょが見つかってしまったこと。自分にも、みんなにも、腹がたって腹がたってしかたがなかったのです。
「だめって、あにき」
「だめだ!おまえらみんなここから出てけ!ここはぜったいおまえらには使わせない!」
ずるい!とか、ケチ!とかいうこえが、こぶんたちから上がります。
「うるせえぇえ!!」
カミナくんの大ごえがひびきわたりました。
「だれもここに入ってくんな!ぜったいだめだ!おれがゆるさねえ!!わかったらとっとと出てけ!」
ほんきでおこったカミナくんは、とてもこわいのです。これ以上くいさがったら手が出てくるかもしれません。(カミナくんはけんかも強いのです)カミナくんのけんまくに押されて、こぶんたちは、あとずさりしながらトンネルに入って、いちもくさんに逃げていきました。
あとにまたひとり残されたカミナくん。腹立たしいのとくやしいのと、どっちもまざった気もちでむねの中がもやもやもやもやして、やりきれません。
「くそっ!」
つぶやいたまま、長いこと、池のそばに立ちつづけていました。
期間限定グレンラガンのカミシモ(シモン総受が信条)テキスト垂れ流しブログです。
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