赤い、荒野を歩いている。
太陽がいつも赤く照らしているから。ここの太陽はいつも赤いんだ。足下の土が熱い。
初めて地上に出てきたときは、それすら嬉しくて、むやみに歩いたり走ったりした。熱い地面と、熱い太陽と、まぶしい光。
赤い、赤い砂。赤い太陽。
「・・・あんまり・・・るなよ・・・モン・・・・」
とおく風に乗って聞こえてくる声。懐かしい声。
「おい、あんまり走るなよ!シモン!こけても知らねーぞ!」
アニキの、声、だ。
遠くから追いかけてくる、声。
「アニキ!」
「おう!どうした兄弟」
そう言って。追いついて。背の高い、影が、俺の隣に。
空色の髪を跳ね上げて。のぞき込んでくる、赤い、赤い瞳。
「アニキ、いつからそこに居たの!」
「?なーに言ってんだ、シモン。俺ぁずっと一緒にいたろうが」
そっか、そうだよ。アニキはずっと一緒にいた。あの穴を出たときから。初めて地上に出て、一緒にお日様を見て。ああ、一緒に戦って。獣人なんかやっつけて。アニキと一緒なら、何だってできるんだ。
俺はいつもアニキと一緒で、一緒なら、なんにも恐いことなんかなくて。
笑いあって、肩を抱かれて、その光る赤い瞳にのぞきこまれれば、俺は何も要らなかったんだ。いつか肩を並べられるようになれたら、って思いながら、歩くアニキを大股で追いかけていられたら、それで良かったんだ。
いつまでも、追いかけていられたら。
「変な顔してやがるなあ。どうした?泣いてんのか?」
「・・・・・・っ・・・何でもないよ、アニキ」
ずっと一緒にいるんだ。これからも。遠くへ行くんだ。月へ行くんだ。どこにあるかは知らないけれど。お日様の向こうかも知れないけれど。アニキとなら行ける。どこまでだって行ける。
そう、思っているだけで、なぜか胸が痛いくらい熱くなって、塊が喉にせり上がってきて、苦しい。ぼろぼろと頬をこぼれていく何か。なんでなんでなんでアニキはずっとそばにいるのに。
「シモン・・・・・・泣くなよ」
アニキが困ったような顔をしている。ああいけない、心配させてる。違うんだ、なんでかわからないんだよ。そう言おうとしたとき、ふいとアニキが俺の顎をつかむ。
(え?)
そのまま、アニキの顔が近づいてくる。
(違う)
目ぇつぶれ、ってアニキの口が動いたような気がして。
(違う違う違う違う--------------------------)
くちびる、を。ふさがれるまえに。頭の中、稲妻みたいに。
(違う、この唇はおれのものじゃなくて)
(もっと大事な、アニキの大事なひとの)
(ああ、あの日は雨が降りそうだったんだ)
(十倍返し、って照れたみたいに)
「違う!!!」
そう叫んで。泣き叫びながら、大好きな、本当に大好きなアニキの胸を突き飛ばして。
俺は、泣いた。うずくまって。赤いはずの地面を叩いて。
もう、何も見えない。何も聞こえない。
絶え間なくノイズの音だけが。
ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
今日も、雨だ。雨、の音、だ。
「・・・・・・っ・・・・・ははっ」
夢だ。やっぱり。
また、見た。枕がじっとり濡れている。今だって、両目から間断なく溢れている。
どこまで、あさましいんだろう。
俺のせいで死んだひと、を、ゆがめて。頭の中で作り替えて。
そうして最後は理性が勝って。俺は、アニキから逃げ出す。
何度も。何度も。
それでも。肩をつかんでくれた感触を。いつものあの声を。きれいな、あの赤い瞳を。
たとえ幻でも、見られた。
それが嬉しくて。懐かしくて。悲しくて。
俺は、もう一度、声をあげて泣いた。
なぜか突発的に書きたくなって書いてしまった。8話以降のシモン。
正直自分も、あの回はまだ1回しか見ておりません。DVD予約したけど見れるかしら・・・・・・・
暗い気分にさせてしまったら申し訳ありません・・・
期間限定グレンラガンのカミシモ(シモン総受が信条)テキスト垂れ流しブログです。
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