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Posted by ふじみき - 2008.03.21,Fri

※「バレンタインデーの作り方~またはがんばれ補佐官~」の補足のような話。


「ゾーシィ運輸産業局長,ご足労ありがとう」
「・・・んで?俺は何で夜中に呼び出されてんだロシウ?」


「補佐官と呼んでください。少々伺いたいことがありまして。
・・・産業局長の出身地,カナイ地方は大規模農園によるカカオ栽培が近年まれに見る発達をしているそうですが」
「おいおい,真夜中に経済議論なら願い下げだぜ」
「ご心配なく,お手間はとらせません。
さて,このほど新しく菓子会社を興し業績を上げている,クラカカオ社の社長とは,ずいぶん親しくなさっているようですね。確か社長もカナイ出身だとか」
「・・・何の話だ」
「・・・あなたですね,僕の目の届かないところで,勝手に総司令の机にCM出演依頼書を置いたのは」
「どーこにそんな証拠がある?」
「どこにもなにも,先ほどクラカカオ社から押収した依頼書,これは僕が見た覚えのないものです。申請書類は全て等しく僕の目を通してから総司令に渡る事になっていますから,まずこれは不正に執務室まで持ち込まれた物ですね」
「んなの!いちいち覚えてるのかよ!」
「覚えてますよ。
大体おかしいと思っていました。さすがの総司令も,いきなりこんな内容の書類にサインするとは思えませんからね。僕の目を通しているという安心感がいけなかった」
「・・・例えそうだったとして,俺が犯人だって根拠がどこにある」
「状況証拠だけでも十分でしょうけどね。
ちゃんと社長と重役からの証言をとってあります。何なら今ここで音声を再生しましょうか」
・・・ちっ・・・いいじゃねえかよぉ,ちょっとぐらい手ぇ貸してやったって。カナイにゃ今まで仕事らしい仕事なんかなかったんだ。地元の発展に貢献してえって気持ちも汲めよな」
「仕事らしい仕事がなかったのはカナイだけじゃないでしょう。かつて地下であった村全てに言える事です,特別は許されません。
第一,あなたは公務員なんですよ!規則を読まれていないんですか?特定の企業・団体・個人に,便宜を図ることは許されないんです!」
「固ぇこというなよ全く・・・」
「とにかく,事実は事実です。その上結果的に明日の混乱を招く事になったのですから,それなりの代償は払ってもらいます」
「何だよぉ!明日この議事堂がチョコレートで埋まんのは俺のせいじゃないだろ!シモンが余計な事をいうから」
「総司令と呼んで下さい!どうあれ,きっかけを作ったのはゾーシィ産業局長,あなたです!
明日はクラカカオの社員とあなたとでチョコレートの検査にまわってください。その間,産業局での仕事はできないでしょうから,欠席扱いです。有給休暇は適用しません」
「んだとぉ?!」
「文句がありますか?幸い金銭・物の授受はなかったようですから,この件はこれ以上追及しません。以後,公務員規則を良く読んで,慎んで行動していただきたい!」

 静かに力をこめたあと,ロシウは席を立つ。小会議室のドアが閉まると同時に,派手に机を蹴り上げた音が反響して聞こえた。
 やれやれと唇から小さなため息が漏れる。
 こういう問題はしょっちゅうだ。いったいいつになったら,ゾーシィさん含め,元大グレン団の政府高官たちは,自身の立場を自覚してくれるのだろうか。かつて村長を務めていたダヤッカさんは,まだ理解してくれているけれども。

 夜中のため省電力の廊下の明かりは薄暗く,ロシウの足取りはぼんやりと重い。
 それでも,彼らは決して自己の利を追うようなことはしないから,まだましなのだ。今回の件も,友情と,故郷の人間に良いところを見せたい虚栄心から受けあっただけで,謝礼の類は何一つ受け取っていないらしい。

 お人好しというか,馬鹿というか・・・

 ろくに口止めもせず,証拠書類の隠滅もしていない。
 苦笑が昇ってくる。それでも何だか温かい苦笑が。
 
 本当に本当に,困った人達だけど,彼らはどこまでも「らしい」人達だ。
 大グレン団。自分の利益なんかハナから考えない,単純で,お人好しで,常に自分のルールで動いていて。
 ロシウは秀でた額に手をやる。子供の頃,しょっちゅう彼らにいじられた場所。
 思い出すこと。笑いの絶えなかったダイグレンのブリッジ,格納庫。

 ・・・結局自分だって,ずる賢く利に立ち回るような彼らを見たくなんかない。

 変わらない彼らに苛立ちながら,どこかで変わらないでいてくれることを願っている。
 ロシウが笑うのは自分だ。矛盾はいつまでも解決できそうにない。

 だからせめて僕が,代わりに賢くもずるくもなろう。
 それが,いつだって腹を立てながら,心の隅で変わらない彼らを願う僕の代償だ。


 渡り廊下の眼下に広がる,カミナシティの夜景もそろそろ灯が小さくなっている。夜明けの近さを感じて,ロシウは科学局へと足を早めた。

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