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Posted by ふじみき - 2007.07.17,Tue


お題・5つの症状より


3.頭痛

 

 


 

頭がガンガンする。痛いと言うよりは、頭全体をぎゅうと何かで締め付けられたり緩めたりされているような。

 デコだデコだと誰かに言われた、この額に冷たい布を乗せられて。まあ寝てなさい、と岩場の影で横にならされた。アダイを出て2日目のこと。



 初めて受けた太陽の光の、これが洗礼なのか。

 日射病、と言うんだそうだ。ロンさんが教えてくれた。暑い太陽にずっとさらされることでなる病気だと。

 

 「あなた達の村は、本当に光と無縁だったみたいだものね。お日様に負けるのはあ・た・り・ま・え」

 

 だから気にしないで休みなさいな。そう慰めてくれながら。

 ギミーとダリーは、グレンの背中の部屋に入っていたから、こんなことにはならずに済んだ。

 僕だけこんなことになったのは・・・・・・やはり心が浮ついていたからで。初めて見る外。色鮮やかな世界。もしも理性が止めなければ、一日中でも駆け回りかねなかった。年少者や同行のみなさんの手前、それが出来なかっただけのこと。

 アダイにはなかった、そしてアダイにいたら一生見られなかったかもしれないもの。まぶしい日差し、果てのない青空、色にあふれ、温かい大地。

 顔には出さない。口にも出さない。衝動的な行動は慎む。そういう教育を受けてきた。暗く静かなアダイの村では、感情を抑えることが義務だった。どんなに小さい声でも響いてしまうあの村では。

 その習慣さえもぐらつかせる、それほど魅力があったのだ、外の世界は。最初はギミー、ダリーと一緒に居たのだけれど、やはり好奇心に耐えられなくて、強いて外を歩かせてもらった。途中からは、シモンさんのラガンに乗せてもらって。

 こうなると知っていたなら・・・・・・いや、やはり軽はずみな行動に出たという事がそもそも悪かったのだ。

自己嫌悪する。自分こそが、旅の足手まといになってしまうとは。

 

 それにしても、身体が、熱い。ロンさんに言われて上着を脱いであるが、それでもちっとも汗が引かない。苔で染めてある着衣が、肌に張り付いて気持ちが悪い。結ってある髪もじっとりとして、いっそほどいてしまいたい。ああ、でもこんなに汗をかくのも初めてだ。昔から、あまり力仕事もさせてもらえなかったから、額に汗するのにも無縁で。

 

 本当に、僕は、なんて狭い世界を生きていたんだろう。

 

 岩の向こうに見える青空を見上げる。鳥と呼ばれる動物が、横切っていくのが見えた。ギミーとダリーが、シモンのペットを追いかけて遊んでいるらしい声がする。あまり日向に居てはいけないですよ、と、今のロシウに言えるわけもなく。ぼんやりとまた空を見る。空は、飽きないな・・・・・・

 

 「・・・ロシウ、起きてる?」

 

 突然声がかかって、びくりとする。岩場の向こうから声の主がひょこっと顔をのぞかせる。シモンさんだ。小動物みたいだなあ、とつい思ってしまった。

 

 「水を、持ってきたよ」

 

 大きめの金属コップに、なみなみと水を注いで持ってきてくれたらしい。ロシウが目を開けているのを確認して、岩を回ってそろそろと運んでくる。

 

 「調子、どう?」

 

 聞きながら、コップを頭の近くに置いてくれる。そうして、華奢な膝を折り曲げて自分も近くへ座った。さっき水を汲みに行っていたはずだから、帰ってきて真っ直ぐにこちらに来てくれたようだ。申し訳ない気分でいっぱいになる。

 

 「すみません、シモンさん・・・・・・」

 「っど、どうして謝るの?」

 

 何とかシモンを視界に入れながら、言葉を探した。

僕のせいで、皆さんの足を止めてしまって。聞けば、長い旅をするという事なのに。邪魔にならないよう、ついていくつもりだったのに。いきなりこんな事になって。

 言いたいことが頭の中に溢れて、締め付けるような頭痛がロシウをまた襲う。思わず額を抑えて呻いてしまい、慌てたシモンがのぞき込む。

 

 「大丈夫!?ロシウ、無理して喋らなくていいんだよ?」

 

 身体がだるくない?頭が痛いよね?あわあわとなりながら、声をかけてくれる。これ以上喋るとさらに心配をかけそうだったが、蚊の鳴くような声で、何とかもう一度、すみません、と呟いた。情けない。

しばらく沈黙。うーん、と何かを考えているように唸って、シモンが頭を掻く。それから少し笑った。

 

 「俺も、さ。最初、なったよ」

 

 何の話だろう。ロシウは、額の布を少し上にずらして、視線を向ける。

 

 「あのね、俺も、初めて地上に出てすぐ、日射病になった」

 

 辛いよね。頭が熱くなって、ぼんやりして、身体から力が抜けて。アニキはさー、気合いで立て、って言うんだけど、もう目の前がチカチカしちゃって。

 

 「太陽にずっとあたってちゃいけない、なんて知らなかった。でも俺、外に出て、初めて見るものばっかりで、居ても立ってもいられなくて」

 

 馬鹿だったなあ。思い出したように、笑う。笑うと大きな目がくしゃりとなって、何とも言えない-----可愛い----顔になる。

 

 「むやみにラガン走らせてみたり、太陽をずっと見上げたりさ。みんなが休憩とってるのに、外をずっと眺めたりしてた。そしたら、なっちゃった」

 

 アニキにも怒られた。『あんなぴかぴかしたもん、何十分もじいっと見てる奴があるか!』だって。アニキだって最初は口開けて眺めてたくせに、ひどいよな。

 何だか目に見えるようで、ロシウの口元が弛む。カミナさんとシモンさんは本当の兄弟ではない、ということだけど、この二人の掛け合いはまるで兄弟同士がじゃれあっているようで、見ていて微笑ましい。(カミナさんとヨーコさん、という二人も良く言い合いをしているが、これは多分、話に聞く「痴話喧嘩」というものかもしれない)

 

 「俺たちの村、ジーハっていうんだけど・・・あ、昨日話したか。明かりをつける機械?みたいのがあって。外の昼間の時間には明るくして、夜の時間には暗くしてたみたいなんだ。だから、光には少し慣れてたはずなんだけど」

 

 アニキは日射病にかからなかったしね。『男は太陽になんざ負けねえ!』って、わけわからないけど。多分一度地上に出たことがあったからなのかなあ。

 

 「ロシウの村は、蝋燭しかなかったんだよね?だから」

 

 だから、太陽に負けて当たり前だよ。気にしないで。

 

 ------ああ、この人は。

 言われたことは実質ロンさんと一緒なのだけど。一生懸命一生懸命、言葉を積み重ねてくれたんだ、自分のために。それに気付いて、何とはなしに胸を突かれた。そういう風に接してくれる人は、今まで周りにいなかった。そもそも、同じ年頃の子供と、こうやって話したこと自体、ロシウにはなかった。

 

 「今日は、ロンさんもグレンのメンテナンスやるって言ってたし。ほら、今すごく無茶な合体の仕方をしてるだろ?下手したらアニキの頭に刺さっちゃいそうで。だから挿入口を作るんだって。一日かかるって言ってたから、ロシウはゆっくり休んで」

 

 ね?とまた随分嬉しそうに笑う。思わずこちらも引き込まれそうな、無邪気な笑い方。笑い返そうとしていたら、また、あー!ごめん、暑くて辛いのにくだらない話ばっかり聞かせちゃって、とあわあわしだす。面白いなあ、と、本当に声を出して笑った。

 

 「・・・ロシウ?」

 「ありがとうございます、シモンさん。少し元気になりました」

 

 それは本当に心から。身体はもちろんまだだるいし、手を乗せてみた額はまだまだ熱いけど。さっきまで暗い地下のように落ち込んでいた心が、さあっと晴れたのだ。純粋な気遣いが嬉しい。

 

 「そ、そう?良かったぁ・・・・・・あのさ、俺、同じ歳の、友達・・・とか居なくて。何か、ロシウと話せて嬉しいんだ。・・・それで、ついいっぱい喋っちゃって。昨日一緒にラガンに乗ったときも、何か新鮮だった」

 「それは、僕も楽しかったです。ただ、外を見るのに夢中で、あまり話しませんでしたね、あの時は」

 「やっぱり!そうだと思った。でもだって初めて見るんだもの、仕方ないよね。」

 「仕方ないですね」

 

 そう言いあって。何だか二人で噴きだした。

 初めて会った時には、全く違う人種ではないかと思うほどだったのに。本当は二人とも、ただの、地下しか知らなかった子供。

 それだけの事実が、お互いに気持ちを温かくしてくれた。不思議な話。

 

 「明日、もしガンメンが来なかったら、またラガンに乗ろうよ」

 「はい。ただ、ほどほどにしておきますけど。また倒れたりしたら、ギミーとダリーにも示しがつきませんから」

 「・・・じゃあ、約束!」

 

 シモンが、見たこともない仕草をした。右手を小指だけ出して握って、こちらに差し出している。何のことだろう。何かのサインだろうか、と思っていると、こちらの右手をとられた。同じ形に握らされて、出された小指とシモンの小指がからむ。

 

 「これ、は」

「指切りっていうんだ。約束のしるしに、小指と小指をつなぐんだって」

 

 そう言って、シモンが小指をきゅっと握る。あまり知らない感覚。柔らかい小指同士が絡み合って。その感覚を追いかける前に、さっと離れてしまう。

 

 「これでよし!」

 「これで、約束したことになるんですか?」

 「そうなんだって。俺、一度やってみたかったんだー」

 

 ニコニコと楽しげに。本当にその顔は見ていて飽きない。初めて見た空と同じで。

 

 岩場の向こうから、小さなブタモグラの悲鳴が聞こえる。どうやらギミーが(もしかしたらダリーが?)とうとう可哀想な動物のしっぽを捕まえたらしい。

 あわてて飛び出していく、その飼い主。額の布は先ほど替えてもらってひんやりと気持ちいい。その上に、まだふわふわした感覚の残る右手の小指を乗せる。

この小指と空の青さがあれば、頭痛が収まるような気がした。





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淡い!淡すぎるよ!
子ロシ子シモは私にはこれが限界なのか・・・!
何か子ロシシモは私の中では同年代百合なので・・・(何をいいだすのか)







タイトル配布元:
http://sheep.iinaa.net/index.html   ヒツジノユメカタリさま
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