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Posted by ふじみき - 2007.08.02,Thu
※「カミナくんブランコに乗る」(中)のつづきです。

 

 

 

 きょうこそは、シモンに会おう。

 

 カミナくんは朝から思っていました。会って、たくさんあやまらなければいけないことがあるからです。せっかくのふたりのひみつきちを、ほかの子に知られたこと。いっしょにいたさいしょの日、自分だけあそんでしまったこと。自分のしたことを思いだすとつらいけれど、ここであやまらなければ男がすたります。

 穴ほりの仕事は昼にいちどお休みがありますから、シモンくんにはその時に会いに行くことにしました。でも、めずらしくはやく起きてしまったので、お昼までまだ時間があります。おうちにいるのも何だかおちつきません。おふとんを出たカミナくんの足は、しぜんとひみつきちの方へ向かっていました。

 

 


 

 いつもどおり村のはずれまでくると、なんだかみょうなふんいきを感じます。この道を、たくさんの人がとおったようなあとがあるのです。ふだんは、こんなところに人が来ることはめったにないはずでした。むなさわぎがします。カミナくんはひみつきちの入り口のあたりへかけつけました。

 ふあんは当たりました。ひみつきちに続くトンネルは、大きく大きくえぐられてぱっくりと口をあけていたのです。

 まさかまさかまさかまさか!

 カミナくんはトンネルをぜんそくりょくで走りぬけます。

 

 「村長!!」

 「・・・ん?なぁんだ、カミナ。おまえか」

 

 ひみつきちには、村長さんや村のおとなたちが何人も入っていました。池の水を調べたり、まわりの岩のかべをたたいたり、いそがしそうに働いています。村長さんはゆっくりと、でもいじわるそうに言いました。

 

 「カミナ。おまえ、こんなばしょがあることをわしにかくしてたんだってなぁ」

 「だれから聞いた?!」

 「ツゲのうちのぼうずが、まっすぐわしのところに来て教えてくれたとも」

 「あんのやろう・・・・・・」

 

 それは、カミナくんがきのう追いはらったこぶんの内のひとりでした。きっと、カミナくんがすてきなばしょをひとりじめしてるのが気に入らなくて、村長さんにつげぐちしたのでしょう。

 

 「さてと、だ。おまえ、村のきまりは知ってるな?こんな広い穴を見つけておいて、村長のわしに教えないとはどういうことだ?」

 

 カミナくんはだまってじっと村長さんをにらみます。ぼうっと光る池を背に村長さんが大きくうかび上がっています。そのうしろの池で。おとなのひとりが、岩の足場にのぼり、ロープをはずそうとしました。

 

 「やめろおおお!!」

 

 とつぜんカミナくんはおどり上がってさけびました。ふいをつかれた村長さんのわきをすりぬけて、ロープをつかんでいるおとなの人に飛びかかります。

 

 「何すんだ!おい、はなせ!カミナ!」

 「さわんな!それにさわるな!!」

 「だれか、こいつなんとかしろ!」

 「こっから出てけ!みんな出ていけえ!」

 「このガキ!はなれろこら!」

 

 うでで払いのけられても、けられても、カミナくんははなしません。こんなことになったのは、ぜんぶぜんぶ自分のせいだ。そう思うとくやしくてくやしくてしょうがなかったのです。だってここは、シモンくんがいっしょうけんめい掘りあてたばしょです。カミナくんはなにもしていません。でも、シモンくんはカミナくんだけに、ここを教えてくれて、ふたりのきちにしよう、と言ったときも、よろこんでくれたのです。ひとりじめすることだってできたのに。

なんとかして、このばしょを取りかえしたい、取りかえさなくちゃ。そんな気もちだけで、カミナくんはやみくもにあばれていました。かみつきました。ひっかきました。でも。カミナくんは、やっぱりまだ小さい男の子だったのです。おとなにかかれば、なんの力もありません。

 けっきょく、何人ものおとなにつかまえられて、村長さんの前にひきずり出されます。あおすじをたてた村長さんはカミナくんの前ににおうだちしています。

 

 「カミナぁ!お・ま・え・はぁ・・・・3日間メシ抜きだあ!!」

 

 村長さんのどなりごえが村中に大きくこだましました。

 

 

 

 

 そのあと、カミナくんは、ぞうきんか何かのように、村のなかの小さなへやに入れられました。はんぶん村のゆか下に埋まっているようなばしょです。村ではどくぼう、といいます。悪いことをした人が入れられるところです。入りぐちとまどがひとつあるだけで、あとは土のゆかの何もないへや。ひとつだけ良いことといえば、手足をしばられなかったことでしょうか。これから3日間、ここに入っていなくてはなりません。

ごはんを抜かれることは、これまで何度もあってなれているので平気です。ただ3日もこんなところに入っていたら、たいくつでしぬんじゃないだろうかと、そっちの方がしんぱいでした。

 

 「あーあ・・・ちくしょう」

 

 今ごろシモンはどうしてるだろう。かんがえると気が重くなります。朝っぱらからおおさわぎしましたから、ひみつきちがみんなにばれてしまったことは、もうだれかから聞いているでしょう。ぜったいだれにも言わない!とやくそくしてくれたのに、自分の方がそれをやぶるようなことをしてしまったのです。

 

 おれのことなんか、きらいになったかもしれない。

 

 そう思うと、ずきんと心がいたみます。ちょっとだけ泣きたくなりました。

 

外はそろそろ夜の時間です。村長さんが明かりをけすように言っているこえが聞こえます。あたりがくらくなるのを見つめながら、カミナくんはしょんぼりとすわっていました。

 

 

 

どれぐらいそうやってすごしていたのでしょう。

さすがのカミナくんもおとなあいてにあばれた疲れで、こくりこくりとしてきたころです。

 ゆかの一部がとつぜんぼこり、と持ち上がりました。はっとして、目をこらしてよく見ると、細い光の中に何かがつきでています。ドリルです。

 

 「なんだ?」

 

 いっぺんに目を覚ましたカミナくん。穴のあいたゆか下からはつぎつぎと光がこぼれて、小さいかげがいっしょに飛び出てきました。

 

 「カミナ・・・!」

 

 それは、まぎれもなく、シモンくんでした。ゆか下の光は、シモンくんのゴーグルの光だったのです。ゆかは土でできていますから、穴ほり上手のシモンくんなら、かんたんに入ることができます。

 

 「シモン!・・・」

 

 うれしさをかくせずに大きなこえを出して、カミナくんはぐ、とつまりました。さっきまでぐるぐるとかんがえていたことが、いちどにもどってきて、口がうごかないのです。

 

あやまらなきゃだめだ・・・。きらわれていてもなんでもいいから、とにかくあやまらなきゃ・・・。

 

おちついて、いきをすいます。

 おもいきって、男らしく「ごめん」と言いかけたとたん、シモンくんはカミナくんにぎゅ、と抱きつきました。

 

 「どどどどうした、シモーン!」

 

 よそう外のことにカミナくんのこえがうらがえります。でもシモンくんは体をはなしません。さらにぎゅうとしがみついたシモンくんの、顔があたっているかたのあたりがあつくなっていきます。

 

------もしかして、泣いてんのか?

 

 あつい水がカミナくんのかたを伝いました。

 

 「・・・ごめんなさい・・・」

 「なっ、なんでおまえがあやまるんだよ!」

 「おれがっ・・・ほった穴、なのに・・・・っ!・・村長に言わなかっ・・・たの・・おれなのにっ・・・カミナがおこられて・・・っ」

 

 ごめんなさい、とシモンくんはくりかえします。

 きょう仕事がおわっておうちにかえるとき。ひみつきちの方からおとなたちがたくさん出てきて話しているのを聞いて、はじめて知ったのです。ひみつきちが見つかってしまったこと。カミナくんが大あばれしたこと。あばれて、ひみつきちを守ろうとしてくれたこと。そのせいで、ごはん抜きにされてどくぼうに入れられたこと。そして、カミナくんがひとことも自分のことを言いつけなかったこと。

 ごめんなさい、ごめんなさい、と泣きじゃくるシモンくんのせなかを、カミナくんは困ってぽんぽんとたたきます。

 

 「おまえがあやまることじゃねえよ。ひみつにしよう、って言ったのはおれなんだから、それに・・・・・」

 

 カミナくんはなるべくやさしく、シモンくんを体からはなしました。まだ泣いているシモンくんを前にして、こんどこそ男らしくびしっと頭を下げます。

 

 「ごめんな!・・・おれのせいで、あそこがばれちまって。せっかくおまえが見つけてくれたのに」

 

 泣いていたシモンくんもとまどいます。こんなふうにカミナくんからあやまられたのは、はじめてです。まじまじと見つめられて、カミナくんはちょっとはずかしそうにつけたしました。

 

 「あと、あのな。さいしょに連れていってもらったときだ。あんときは、ひとりではしゃいでひとりであそんじまって、ごめん、な」

 

 さすがにてれくさくて、下をむきながら、でしたが。

 

 「こ、こっちこそごめん、おれ、あのときかってに帰っちゃって・・・」

 

 シモンくんもなんだかはずかしくなって下を向きました。ごめん、ごめん、とふたりで下を向いて、だまったじかんがしばらくすぎました。さきにかおを上げたのはカミナくんです。

 

 「ふたりであやまりあって、だまってるのもなんだから、これで終わり、な」

 

 そう言って、まだ下げていたシモンくんのあたまをぐりぐりとなでました。あったかくて、くすぐったくて、シモンくんがへへへ、と笑います。カミナくんもつられて笑いました。

 

 「よおし、わらったな。男はいつまでも泣くもんじゃないぜ」

 

 のこったなみだをマントのくびもとでふいて、シモンくんは顔を上げました。

 

 「でもカミナ、ひみつきち、なくなっちゃうのはざんねんだね」

 「まあなー。けど、ちかは広いんだ。おまえならあんなばしょ、またすぐに見つけられるだろ?」

 「それは・・・わかんない、けど・・」

 「だいっじょうぶ!おまえならできる!おまえはいつだってすげーもん掘ってみせるじゃねえか」

 

 ぱしん、とけいきよく、カミナくんがシモンくんのせなかをたたきます。

 

 「そしたら、またあのロープの『ぶらんこ』、つくってくれよ」

 「ぶらんこ??」

 「あのロープでぶらぶらする乗り物だよ!今おれがなまえをつけた!ぶらーんとするから、『ぶらんこ』だっ」

 

 それはちょっとそのまんますぎないかな、とシモンくんは思いましたが、カミナくんがあの乗り物を気に入ってくれているのはうれしかったので、口には出しませんでした。かわりに、いまいちばんカミナくんがよろこぶことを口にします。

 

 「カミナ、おなか、すいてるよね?おれ、いまからたべものとってくるよ」

 「お!!ありがてえ!シモン、まかせたぞ」

 

 シモンくんは「まかせといて」とかえすと、いそいそとゆかの穴にもどっていきました。

それを見送っていたら、言われるまではへいきだったカミナくんのおなかが、いまさらぐう、とおとをたてました。へへへとにが笑いしながらおなかをさするカミナくん。でも、シモンくんがいるなら、これからの3日間もおなかのしんぱいはしなくても良さそうです。

 ぐっとうでを上げてからだを伸ばします。そのままどーんとよこになります。つめたい土のかんしょくも、いまはちっとも気になりません。しせんの先にシモンくんが出てきた穴があって、もういちど、まんぞくそうにカミナくんは笑いました。

 

  あいつがいつも来てくれるなら、たいくつでしぬなんてことありえないな。

 

 

夜の村はしん、と静まりかえっています。

 心地よい静けさにつつまれながら、土の中のシモンくんの足音が聞こえてくるまで、カミナくんはずうっと、耳をすましつづけていました。

 


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ながながおつきあい頂きまして、ありがとうございます!
絵本にするつもりが、なんだこれ、単なる長い文章です。「カミナくんブランコに乗る」
というお題で一本書いただけのような・・・・
教訓。「絵本は絵がないと説明を文章で書かなくてはならない」。
こんな簡単なことに気づかなかったとは・・・・!(馬鹿)

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