2.
がんがんがん!!
激しくドアを叩く音がします。旧式のドアノッカーが石つぶてになって鳴り響いて,表から住民を呼んでいます。
------シモンか!?
夢うつつの弱い眠りから飛び起きたカミナは,ベッドから飛び降りてドアを目指しました。焦って回すノブが滑って,なかなか開けられません。息を切らして,がちゃがちゃと壊さんばかりの勢いでノブを引っ張ります。
「おっ届け物だぜえ,シモ・・・んだぁ?」
「・・・んだよ,おめーかよ」
開いたドアの向こうに立っていたのは,今,別に見たくもない顔でした。路地の表で,酒や食べ物の小売り店を営んでいるキタンです。朝の空気の中,ガタイの良い腕に平たい包みを抱えて,驚いたようにカミナを見つめています。
この2人は会うとけんか腰になるのが普通で,ただでも機嫌の悪くなったカミナは食いつくようにキタンに詰め寄りました。
「てめえ何しに来やがった」
「おめえこそ,こんな時間に居るなんて珍しーじゃねえか。俺はシモンに用事があんだよ,そこどけ」
「!っ・・・シモンはいねえよ。何の用事だ」
語気が荒くなります。自分の知らないところで,シモンが誰かと用事を作っていた事さえ,今のカミナの神経を逆撫でするのです。
カミナの言葉なぞ信じないキタンは,カミナの脇をすり抜けて勝手に部屋に入っていきました。見回して,確かに居ないことを確認すると,ニヤリと笑って振り向きます。
「カミナ・・・お前ついに愛想つかされたのかぁ?」
途端ふってきた拳を,キタンは片手で軽々と受け止めました。残念ながら,カミナは腕っ節のほうはあまり強くありません。それにひきかえ,キタンは筋骨隆々,界隈でも有数の腕利きです。なまくらの腕から繰り出されるパンチを,避けるのも受け止めるのも朝飯前でした。
「熱くなんじゃねえよ!ほんっとに珍しいな」
「うるせえ,黙れ!」
効かないとわかっていても殴りかかってくるカミナの腕を押さえ,キタンはまあまあといなします。それでも鼻息の荒いカミナに,キタンは持ってきた荷物を押しつけました。
「・・・んだよこれぁ!」
「だからシモンに届けもんだ。前金でもらってるからなあ,本人が居なくたって置いていくぜ」
渡されたのは,本の様な厚みの重い包みでした。かすかに甘い香りが漂ってきます。受け取ってしまって所在なく止まってしまったカミナに,キタンはサインをよこせと受け取り票をつきつけました。
そういや,あれも珍しかったな。シモンの方から,あんな風に頼み込まれるなんて滅多にねえし。不承不承サインをしている最中,思い出したようにキタンはつぶやきます。
聞き捨てならない言葉に反応して,カミナは顔を上げました。普段シモンは,カミナはもちろん,周囲の人間に,強く頼み事をする事などないのです。シモンがそこまでして届けて欲しかったものが何なのか,気になりだしました。
「・・・おい,これ,中身はなんなんだよ」
「あん?ああ,チョコだよチョコレート」
「チョコぉ?」
「おう,しかもそんじょそこらのチョコじゃねえ。本来ならテッペリンの菓子屋にでも行かなきゃ手に入んねえ高級品だぜ。コイーガなら卸す前に手に入るってんで,キッドとアイラックに頼んでな」
あいつらにも手間かけさせちまったなー,まあシモンが頭下げて回ったもんだから,却って恐縮してたみてえだが。
「なんで,あいつがチョコ菓子なんか頼んだ!」
サインを確認して懐にしまっているキタンに,困惑したカミナは挑みかかります。
「んなこと俺が知るわけ・・・あーもしかしたら,明日,チョコレートの日だからか?」
「なんだぁ?その素っ頓狂な名前の日は」
「・・・おまえ,カレンダーとか見たことあるか?」
「あるに決まってンだろ喧嘩売ってんのか?」
また喧嘩腰になりかける雰囲気を何とか制して,キタンはポケットから手帳を取り出しました。太い指でページを器用にめくって,今月のカレンダーを指さします。
「ほれ,明日んとこに何て書いてある?」
「・・・読めね」
「だああ,お前まだ文字覚えてねーのか!良っくそれで生きていけてんなあ!いいか,チョ・コ・レ・ー・ト・の・日,って書いてあんだ!」
「だから何でその日がチョコレートの日なんだよ!」
「知るか!暦を作ってんのは獣人どもなんだからな!とにかくだなあ,何だか知らねえが,あいつらの間じゃその日にチョコレートを大事なヤツに贈るんだとよ。そんでオスメスが喋々喃喃,やることやるとかやらねえとか,まあそういう日だっていう話だ」
キタンの話では,その獣人たちの風習が,このところ人間街にも普及し始めているということでした。そもそもカレンダーにそう記されてしまっていますから,人間にも興味を持つ者もいるでしょう。
遡ればそれは何千年も前の昔に,自分たちと同じ人間が知っていた他愛ないお祭りだったのですが,彼らがそれを知るよしもありません。獣人は獣人で,過去の記録を元に暦を作っているので,何の疑いもなしにその日を暦に記したのです。
「んなわけで,俺の店でもチョコ菓子が結構な勢いで売れてんだよ。その仕入れをつむじ風の2人に頼んでっから,ついでにテッペリン行きの高級な方をこっそり買い取ってこさせた」
それも,シモンがどうしても,と頼んだのだそうです。キタンの店に置いてあるのでは駄目で,特別な,風味の強い種類のが欲しいと品種まで指定されたのだとか。
「ま,シモンもお年頃だろ。口説き落としたい女の一人でもできたんじゃねえのか」
今まで浮いた話がなかったのが不思議なぐれえだよ,14つったら俺なんかなあ・・・
べらべらといらないことをしゃべり始めるキタンをよそに,カミナは考え込みます。受け取ったチョコレートは,加工されていない板のままなのだそうです。おそらく,シモンは自分で削るなりして,良い形に仕上げようと思っていたのでしょう。
甘い香りの荷物の重みが,片手にじわりと負担をかけてきます。もしかしたら,昨日自分が壊した細工物も,シモンが誰かに心をこめて贈りたいと作っていたものだったのでしょうか。
ちくり,とまた胸が焼けました。
好きな女が,できたのか。
『一番大事な物を,壊してるかもしれないわよ?』
リーロンの言葉が頭にこだまします。
手にした包みを,カミナはそっとキッチンの隅に置きます。そうして,まだ滔々と自分の恋愛譚を語るキタンの腕をひっつかむと,
「ちょっとつきあえ」
と告げざま,うるさく喋る大きな体をずるずる引っ張って部屋を出て行きました。
夕暮れが迫る頃。路地からの赤い日の光が,小さな部屋を染め上げています。
きぃ,と小さな音を立てて,部屋の扉が静かに内側に向かって開きました。きょろきょろと中をうかがう人物は逆光で良く見えません。細い影が,何度か中を確かめた後,すっ,と室内に滑り込みました。後ろでドアがぱたりと閉まります。
「良かった・・・アニキ,まだ外だ」
安堵してつぶやいたのは,この部屋の主の一人。シモンです。急いで帰ってきたのでしょう,藍色の髪が汗で額に張り付いています。息を弾ませているシモンは,ところどころほころびのある芥子色のパーカーを椅子に引っかけました。
部屋の薄暗さに目がまだ慣れていません。目的のものを探して視線がさまよいます。
キタンは,持ってきてくれたのかな・・・
もし誰も居なかったら,どこかに置いておいてくれると約束はしていました。玄関の脇にはそれらしい荷物はなかったので,部屋の中かもしれません。何度か見回したキッチンの隅に,茶色い包みが見えて,シモンはほっと息をつきます。
「よう」
包みを取ろうと手を伸ばした瞬間,耳慣れた声が後ろからかかって,シモンは飛び上がりました。
「あああアニキ?!いつからそこ・・に・・」
居たの,と続く言葉は広い胸板に当たってかき消されます。焦って振り向いた,顔はそのままカミナの胸の中に埋められていました。後頭部はしっかりと大きな手で押さえられています。額に当たる胸の中心が,鼓動しているのがわかります。
「・・・やがって」
「え・・・」
「やっと帰って来たのかよ・・・っ心配かけやがって」
降ってきた思いがけない言葉に,シモンの動きが止まります。激情を押さえるように低くかすれた声。驚きと一緒に,シモンの胸の内が一気にふわっと明るくなります。
心配して,くれてたんだ。
そんなこと想像もしていませんでした。何しろ昨日は,あんな風にカミナを追い出してしまっています。一時の怒りに駆られての事とはいえ,シモンは後悔でいっぱいでした。その上,予定外に一日いっぱい家を空けています。どうやってカミナに謝ろうかと,そればかりを気にして帰ってきたのです。玄関を開けた途端に罵声がとんでくるかもしれない,などということまで想像していましたから。
それに,あるいは,全く気にされて居ない可能性もありました。カミナは時々何も言わずに家を空ける事があります。大概は新しい商売に手を出そうとしたり,賭け事のしすぎで帰って来れなかった時です。ですから,自分が家を空けたところでカミナは何も感じないものと,無意識にシモンは思いこんでいました。
こんな風に,心配されて,優しく抱きしめてもらえるなんて。思ってもみませんでした。
「ごめん,アニキ」
思わず頬をすり寄せて,シモンはつぶやきます。柔らかい頬の感触に,カミナはいっそう強くシモンを抱きしめかけましたが,咳払いして,いや俺の方こそ悪かったな,ともごもご言ってごまかしました。幸せそうに自分に寄りかかってくるシモンを見ると,これから言うことも言えなくなりそうです。カミナは理性を総動員して,名残惜しげにシモンの体を離すと,ポケットをごそごそと探ります。
「ほらよ。お前にやる」
シモンの手の平に落とされたのは,小さな箱です。ただの箱ではありません。小さいながらも,薄桃色の包み紙で綺麗に包装され,簡単ではありますが,赤いリボンもかけられています。
「ど,どうしたの,これ?」
「・・・詫びだ。お前の大事なもん壊しちまった詫びだよ」
きょとんとして,手の上の箱とそっぽを向いてしまった横顔を交互に見つめるシモンに,明日はチョコの日なんだろ,という静かな声が聞こえます。
「キタンの店のやつだ。コイーガの高級チョコ,とはいかねえがな」
アニキが物をくれるなんて!
シモンは驚愕に目を見開きました。ただで何かをするのも,ましてや何の見返りもなしに物を贈るなどということには無縁のカミナです。たとえ明日がチョコの日だと知っていたとしても,いつもならそんなこと思いつきもしないでしょう。何だか一日家を空けていただけで,驚くことが多すぎて,シモンは頭がうまくついていきません。
その間に,カミナの手がつと伸びて,キッチンに置いてある包みをシモンに手渡します。
「あ,アニキが受け取ってくれてたんだね!」
シモンの顔がぱあっと輝きます。嬉しそうに大きなチョコの包みを受け取る様子に,カミナの表情がほんの少し苦くなります。
やっぱり,大事なヤツにやるんだな。
弾む手つきで包みを開ける様子に,カミナは確信していました。昨日壊した物も,自分の推測通り,誰かへの贈り物だったのでしょう。だからあんなにシモンは怒ったのです。歯車が全て噛み合った気がしました。
俺はこいつの春の目覚め,ってやつを応援すべきだろう。
兄貴分としての責任感はそう告げます。村に居たときから何かと奥手で,特に女に関してはほとんど恐れていると言っても良い節があったシモンです。その弟分がついに好きな女を見つけて,自発的にアタックをしようとしているのです。その成長を喜びこそすれ,寂しさを覚えたり,ましてや不快な気持ちになるなど,あってはならないことでした。
ならないことなのです。
ならないことだ,と言い聞かせます。
・・・・・・
だから,ならねーんだあああああ!!
最後は脳内で絶叫に近くなりました。
「ア・・・ニキ?どうしたの?」
気が付くと,のけ反ったり頭をかきむしったりして苦悩しているカミナを,不審そうにシモンが眺めています。今日のカミナはあまりにも変です。物をくれたかと思えば,一人パントマイムを繰り広げたり。お酒の飲み過ぎでどうかなっちゃったんだろうか,と心配になってきます。
おう,と我にかえって返事をするカミナは,どうにも居たたまれません。これから加工するらしいチョコをキッチンに運ぶシモンの姿が気に障って,よろり,とベッドの上に座ります。
それでも視線はシモンを追ってしまっていました。キッチンに立つ小さな後ろ姿は,喜びに満ちあふれているように見えます。
結局カミナは気になって仕方ないのです。シモンが好きになった相手のことを。リーロンの店の赤髪のウエイトレスでしょうか。キタンの所の三姉妹の誰かでしょうか。それとももっと他の?
何とか自然に相手の名前を聞き出せないかと,カミナは頭を絞ります。でも,やはりカミナにそういった言葉は難しかったのです。結局,大して考える間もなく,単刀直入に聞くことに結論が出ました。
腹をくくって,何やら作業を進めているシモンに声をかけます。
「・・・シモン」
「何ー?アニキ」
「お前,水くせえじゃねえか」
「・・・何の話?」
「とぼけんじゃねえよ,チョコの日ってのは好きなやつにチョコ菓子贈る日なんだろ?」
振り向いたシモンの顔が俄に赤くなります。アニキ良く知ってたねそんなこと・・・と言いながらもじもじと手を擦るシモンに,否応なくカミナの不機嫌は増します。その仕草はどちらかというと恋する乙女にも似ていましたが,それが余計にカミナの心を落ち込ませました。
「・・・んで?誰なんだよ,相手は」
つとめて明るく,からかうような口調で。そう思っているのに,青い頭が知らず下がっていきます。シモンがはにかみながら,笑顔で思い人を告げるであろう情景を,想像するだけでカミナは耐えられませんでした。だらり,と腕を下げて,自分のシャツのハート柄がやけに目につきました。所々が欠けているコンクリートの床が,力無い視線を受け止めています。
長い沈黙が,続きました。
キッチンからはさっきから甘く香ばしい香りが流れ続けています。
だんだんカミナの忍耐に限界が近付きました。いくら照れていると言っても,これは長すぎます。苛立ちが募ってついにがばりと顔を起こすと,さっきと全く同じ場所で,固まっているシモンの顔です。こぼれ落ちそうな目を見開いて,穴の開く程こちらを見つめています。
「~~~っ何だよ,早く言えよ。好きな女ができたんだろ?ヨーコか?それとも,キヨウか?まさかリーロンじゃねえだろうな」
最後の人間の名前は,冗談のつもりでも我ながらぶるりと震えがきました。もしもリーロンが相手ならばこれは兄貴として是が非でも止めてやらなければなりません。
正直,相手が他の人間だったとしても止めてしまいそうな自分が居るのでしたが。
じっと睨め付けるカミナと目と目を合わせて,シモンは。
シモンは,顔を思い切り赤らめて,笑い出しました。
「んっだよ!!何がおかしい!」
「ちが・・・ごめん,アニキ,でも・・・」
「でも何だ!俺が昨日壊したのも,その女にやりたいもんだったんだろ?だからあんなに怒ってたんじゃねーのか!?」
いきり立つカミナに,シモンはようよう顔を引き締めて,ちょっと待ってて,と告げます。それは割合に真剣な顔だったので,気勢をそがれたカミナは,とりあえず怒りの矛先を納めました。目の前にはかいがいしく働くシモンの背中。その向こう側には甘く温かい湯気がたちこめています。
いらいらと膝を叩きながら,カミナは待ちます。
しばらくして,「できた!」という小さな声が聞こえました。
何だよ,やっぱりチョコ菓子を作ってるんじゃねーか。カミナは舌打ちします。
想像したようにドリルで削りはしませんでしたが,カミナには良くわからないやりかたで,シモンはチョコを加工したようです。
ニコニコしながら振り向いたシモンは,小さな皿をテーブルの上に置きました。その上に,ころん,とふりだされたもの。それは。
「・・・これ,俺,か?」
「そう!良くできてるでしょう?」
両手の平に乗るぐらいの大きさの,チョコレートの人形が,皿の上に転がっています。顔はさすがにはっきりとは浮き出ていませんが,前髪の長い髪型や,意外に精巧に浮き出ているのはハートマークのついたシャツです。
「ね。これは,アニキに,なんだ」
「俺に?」
「そうだよ!」
照れも混じって,少し怒った口調でシモンは説明します。
甘い物が苦手なカミナのために,あまり甘くないチョコレートを調べて探したこと。キタンやキッド,アイラックに頼んで,買ってきてもらったこと。
昨日カミナが壊したのは,このチョコレートを作るための型だったのです。
「何日もかけて彫ってたから,ついかっとなっちゃって・・・」
オレが勝手にやってたことだったのに,ごめんね。
シモンは心底すまない顔でカミナに謝ります。
結局,昨日今日と家を空けていたのは,この型を修理するためでした。食べ物に使うためのものだったので,このあたりで出回っている粗悪な接着剤を使うこともできません。シモンは口に入れても大丈夫な,純正の蜜蝋を求めて方々を歩き回っていたのでした。
「おかげでアニキにも心配かけちゃった」
「・・・お前」
にっこり笑うシモンに,カミナは二の句が継げません。それより何より,キタンの言っていた事が蘇ってきます。チョコの日は,大事なヤツにチョコレートを渡す日だ,と。
皿の上のチョコレートを呆然と見つめている兄貴分を,上気した頬のままシモンはまっすぐ見つめました。
「・・・ねえ,アニキ。オレがこういう物をあげたいって思うの,アニキしか居ない」
それは,つまり,俺のことが。
「アニキの他に,好きな人なんか居ると思った?」
近付いてベッドの脇に座り込んだシモンは,まだ無言のままの顔を見上げます。その表情があんまり幸せそうなので,カミナの眼は釘付けになりました。
何だか嬉しいなあ,とシモンは笑うのです。今まで,カミナが他の女性にちょっかいをかけるのを,気にしていたのはシモンのほうでした。そういうカミナでしたから,シモンに対してそういう,言ってしまえば嫉妬するような事なんて無いと思っていたのです。もちろん,そうでなくても,シモンは他の誰かを好きになることなんて考えられなかったのですが。
それに,とシモンは思います。今まで散々体を重ねてきたのに。知らなかった事を,全部教えてくれたのはアニキなのに。どうしたら,アニキ以外を好きになれるっていうんだろう。
思い出すと少し体が熱くなります。ベッドに腰掛けている膝に,シモンは何となく子猫のようにすり寄って頬を預けました。
「・・・まだできたてだけど,美味しいから・・・良かったら,食べてね」
小さく,首をかしげる仕草で。
途端,世界が回りました。
あっという間にシモンはベッドに抱え上げられています。抗う暇もあらばこそ,電光石火の早業で,シモンのシャツはすぽんと脱がされていました。
「ちょ,アニキ,オレが食べてっていったのはチョコの方・・・っ」
「うるせえ!あんな顔して煽りやがって我慢できるか!」
ハアハアと息を荒げるカミナに余裕はありません。さっきのシモンの表情と告白は,見事にカミナの下半身を直撃してしまったのです。はっきりいって,どんな悩殺ポーズよりも効きました。
「チョコももちろん俺は食べる!だがその前に,お前を食うのが先だ!」
噛みつくようにキスを落としながら,カミナは堂々主張します。何それ!と叫びながらも,勢いに気圧されて体を預けるシモンには,もう抵抗する気はありません。
頬から上がった唇はそのまま耳に吸い付きます。ぴくん,とシモンが撥ねる合間,いつまでも離れない唇から,照れくさそうな低い囁きが漏れました。
俺だって,お前しか食わねーよ,シモン。
こみ上げる喘ぎに混じって聞こえた言葉はどこまでも真実で。泣きたいように嬉しくて,シモンは広い肩にぎゅっと抱きつきました。
・・・その後。調子に乗ったカミナが,チョコレートプレイを提案して殴られるという一幕があり,翌日兄貴分はまたリーロンの店でくだを巻いていたと言いますが,それはまた,別のお話。
期間限定グレンラガンのカミシモ(シモン総受が信条)テキスト垂れ流しブログです。
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