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Posted by - 2024.05.04,Sat
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Posted by ふじみき - 2008.02.14,Thu


2.

 がんがんがん!!
 激しくドアを叩く音がします。旧式のドアノッカーが石つぶてになって鳴り響いて,表から住民を呼んでいます。

 ------シモンか!?

 夢うつつの弱い眠りから飛び起きたカミナは,ベッドから飛び降りてドアを目指しました。焦って回すノブが滑って,なかなか開けられません。息を切らして,がちゃがちゃと壊さんばかりの勢いでノブを引っ張ります。

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Posted by ふじみき - 2008.02.14,Thu

※注 今回のカミナはいつにも増してヘタレです。(まあハートアニキなので)
  苦手な方は読まない方が良いですよ・・・!



1.


 「ぁあにきの!!馬鹿ぁあああ!!」
 
 テッペリン都下,スラムの一角。
 朝の静寂の中,街を貫いて怒声が響き渡りました。

Posted by ふじみき - 2008.01.30,Wed

※「月見ヶ丘」最終章です。以前のものはこちら→   


4. <月も むこう向いていて>

 

 月光は相変わらず降り注いでいて,ススキ野原は明るく波打っている。シモンは幼い子のような熱心さで,飽かず上空の月を眺めていた。
 あまり集中している姿が,ほほえましさを誘って,悪戯心を起こす。カミナはこっそり何かを取り出した。

 「・・・ぅひゃっ!?」

 頬に熱い物を押し当てられて,文字通りシモンは飛び上がる。頓狂な声を聞いて,今度はカミナも声を上げて笑った。

 「ほれ,ちっと冷めちまったけどな」

 俺のおごりだ,と手渡されたのは,缶コーヒーだ。いつの間に買っていたのだろう。あるいはシモンを呼び出す前にもう購入していたのかもしれない。驚きを覚まして受け取る,少し冷えてきた指先に,スチールの缶は熱い。パーカーの袖を少し伸ばして,シモンは包み込むようにそれを持った。
 立ちんぼも何だから,とカミナはそこらにあった切り株を指し示す。自分も手近の一つに腰を下ろして,手元の缶を開けた。ミルクコーヒー,と書いてある白いそれを見て,シモンは彼がコーヒーが苦手だったことを思い出す。シモン自身の手にあるのは,無糖の黒い缶だ。そういえば,この銘柄が好きだと言うことを,何気なく話した事があった。

Posted by ふじみき - 2008.01.22,Tue
※お久しぶりの「月見ヶ丘」です。以前のものはこちら→   


3.  <とっておきの場所まで 君だけを連れていくよ>


 ぶるり,と寒気がしたので,寮室で1人のシモンは,足下のヒーターの電源を入れることに決めた。明日までに終わらせなければならない課題がある。グアーム先生の古典。ねちっこいことで知られるあの先生は,生徒がぎりぎりがんばれば終わらせられる,という絶妙にいやらしいレベルの課題を出してくる。腹を据えてかからなければならない。
Posted by ふじみき - 2008.01.16,Wed


2.

 事の起こりは,シモンからでした。
 シモンは,街唯一の教会に住む小さな双子,ギミーとダリーのために木彫りの人形を作っていたのです。手先の器用なシモンは,小さな手回しドリルを使って,何だって作る事ができます。それを兄貴分のカミナに見とがめられました。

 「買われるわけでもねーのに,なんでそんなもん作ってやってんだ?」

 カミナにしてみれば,何の理由もなく人にものをあげるなどということは,馬鹿げているとしか思えません。苦笑しながらシモンは説明します。

 「教会のお話でね・・・」

 それは,教会で子供たちが毎週聞く,お説教話の一つでした。一年中,街で一番良い子にしていた子供のところには,年が暮れる冬の夜,すてきな贈り物が届くと言うのです。
 もちろんそれは,いわゆる訓話というものでしたが,毎年その話を聞かされている小さなギミーとダリーはそれを熱心に信じていました。そして,今年も「自分たちが選ばれないかな」と毎日一生懸命お祈りしているというのです。
 教会の司祭見習いで,双子の面倒をみているロシウが困ったようにその話をしていました。あまり熱心なので,少し不憫だというのです。かといって,けして内証が豊かでない教会ではプレゼントを買ってあげることもできません。
 元気な双子も,ロシウも,シモンの友達です。貧乏なのも一緒です。というよりも,人間の街では一部をのぞいて,誰もがかつかつの暮らしをしていました。誰も娯楽やプレゼントにかけるお金など持っていなかったのです。だから,シモンはせめていらない木っ端などを使って,自分ができることでプレゼントにしてあげようと思ったのでした。

 「気にいらねーな」

Posted by ふじみき - 2008.01.16,Wed


1.

 テッペリンの都は,今夜,大変賑わっていました。
 それもそのはずです。今夜は年に一度のトナカイ祭。トナカイの獣人達が中心になって開かれる,冬の夜のお祭りの日なのです。トナカイ獣人たちの鼻が赤くなる,それが合図です。鼻が赤くなると不思議とトナカイの一族は陽気になり,走り回り,果ては空を飛ぼうとするなど奇行に走り出すのです。その騒ぎがやがて発展し,集まって一緒に騒ぐお祭りに発展したと言われていますが,真偽は誰にもわかりません。大昔の,彼らの先祖にあたる動物の遺伝子が何らかの影響を与えているのでは,というのが最近の研究の結果です。けれども本人達はそんなことはどうでも良かったのです。気持ちがウキウキするのは楽しいことでしたし,それに便乗して,他の種族の獣人たちも一緒に騒ぐようになったので,余計に面白かったのです。おかげで祭は年々歳々大きく華やかになっていました。
 この夜,獣人達は夜通し起きて,美味しいものを食べたり飲んだりするのです。贈り物の交換も行われます。この時贈られるものは,小さい飾り物であったり,甘いお菓子であったり,どちらかというと・・・そう,人間で言う,子供が好む意味のないオモチャのようなものほど良いとされていました。本当に,それが何故なのかは誰もわからなかったのですが。
 きらきらと光るランプが街のそこかしこに下がっていて,テッペリンの住民たちの顔を照らし出します。楽しい音楽が流れています。派手な色の服,特に赤をふんだんに使った衣装,つり下がる金や銀の鎖,ショーウィンドウにはこれでもかとお菓子やオモチャが並べられていました。

 

Posted by ふじみき - 2007.12.25,Tue


 

 客足が少しずつ増えてきていた。

 相変わらず俺は,安酒場のカウンターにへばりついている。早く帰ったところでボロ家には何にもありはしない。食うものも,飲むものも,もちろん,待っている奴も。

  熱い息に少し笑いが混じる。まだシモンが家に帰っているはずはないのだ。あいつは俺との約束を破ったことがない。

黒い酒をひとなめひとなめ,時間と酔いを持てあましながら,ただ無為にスツールを占領している状況。ああ,顎が痒い。髭が伸びている。何も食わなくても,どうしてこういうのだけは伸び続けるんだ?鬱陶しいそれを撫で回して,半眼。

 ばたん,とデカい音がして,酒場のドアが開いた。通りの人声が一瞬大きく聞こえる。

 

Posted by ふじみき - 2007.12.03,Mon
※お題「駄目人間5のつぶやき」多元宇宙兄弟話の挿話です。
※お題2の続きになります。



 

良く行く人間用の安酒場は、今日も早い時間から客が入っていた。

シモンが金を稼いでくると部屋を出て行った後。俺はポケットに残っていた小銭を手に、口笛交じりで出かけたのだ。二日酔いには迎え酒だ。獣人の金庫から盗んだ金?そんなはした金、貧乏人どもにくれてやらぁ。俺には生きた金づるがあるんだからな。そうさ、俺の言うことだけを聞く弟分だ。

 

『黒の兄妹亭』は看板三人娘と、柄の悪い男が経営している。どこから仕入れるんだか、安い金でもそこそこの量の酒を出すし、年頃の娘が給仕をしてくれるとあっちゃぁ、人も集まるはずだ。かく言う俺も常連であり、三人娘で一番年嵩、金髪・碧眼・ナイスボディと三拍子そろったキヨウには、何かと粉をかけている。うぜえ実の兄貴が目を光らせてるから、なっかなか話もできねえのが現状ではあるが。

Posted by ふじみき - 2007.11.26,Mon



 

ずるり、と舌が鳴ったときから、仕事は始まっていた。

路地裏の小さな部屋。オレたちの家とほとんど変わりない広さで、唯一違うのは地上にあるせいか湿った空気がないことぐらい。あるのはボロベッド一つ。その上に、すでに全てをさらけだした、自分が居る。天井の明かりだけがやけに煌々とついていた。

細長い口吻から舌の出し入れを見せつけながら、今日オレを買ったアリクイ獣人がニヤニヤ笑っている。ピンク色にぬめるそれは、口内器官というよりはひとつの軟体動物だ。ベッドに上がってきて、短い腕でオレを拘束する。目の前をちろちろと揺れる舌から、つうぅと唾液が糸を引いてオレの毛のない胸に落ちた。

この類の獣人の相手は初めてじゃない。どんな感触が来るのか分かってはいる。けれど。

 

 

 

 

Posted by ふじみき - 2007.11.19,Mon


「駄目人間5のつぶやき」より

(※26話,多元宇宙のハートのアニキとシモンの話です。ご注意。)



 

「呼吸するのめんどくさい、心臓動かすの疲れる」

 

枕の隙間から聞こえる声に、オレはため息をついた。

半地下のオレ達の部屋は、いつもどことなくカビくさい。1DK、男二人がぎりぎり住める部屋。家具は殆どなく、あっても質の悪いリサイクル品。床はひび割れたコンクリート打ちっ放し。それでもベッドは一つしかなくて、その一つを今まさに占領しているのが、オレの、アニキ。

 昨日の酒が全然抜けてないんだろう。通気の悪い部屋に体内を通過したアルコール特有の匂いが、夜からずっと充満している。ボロ布団を半分引っかけてうつぶせ。服も昨晩のまま。獣人の縫製工場から払い下げの、難あり品。といってもどこかがほつれている風でもない。敢えて言うなら、柄が難ありなんだろう。薄いピンクの地に、これでもかとハートの飛び交っている、おめでたいシャツ。生地は紙より薄くてぺらぺら。水色の髪のアニキには、おそろしいほど似合わない。

 オレはおずおずとベッドの近くから声をかける。

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