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Posted by ふじみき - 2007.11.13,Tue

2.

 「テツカン、入るぞ」

 返事ともうなりともつかない声が聞こえたので、遠慮なくスチールのドアを押し開けた。

 「うっ・・・」

 ドアの先は、一種異様な雰囲気に包まれている。休日の昼だというのに、遮光カーテンを閉め切って薄暗い部屋の中。外から来た者には、一見して部屋の造作はわからない。ここの寮室はみな同じ作りのはずではあるが。

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Posted by ふじみき - 2007.11.13,Tue

1.

  これはまだ、9月のお話。


 「あいつら、ぜってー怪しいと思う!」

 いつもの3人、顔つきあわせた開口一番、キッドは声高に主張した。
 昼下がり、5限目はただいま自習時間である。うららか、というには少々暑いが、着ているものさえ調節すれば過ごしやすい。
 というわけで、それぞれ、腹から下のボタンしか留めていないゾーシィ、潔く(と言っていいのか)タンクトップのみのキッド、わずかに開襟シャツの第一ボタンだけを外したアイラック。各々が涼を取る対策を講じながら、与えられた時間をうだうだと過ごしていた、その最中。
 
 「あいつらって誰だ」
 「カミナとシモン」
 「怪しいって何がだ?」
 「そりゃあもう・・・」

 右と左の人差し指を、×の形でちょんちょんちょん。

 

Posted by ふじみき - 2007.11.06,Tue

 

 思い出しました。夜はこんなにも静かだったんですね。

 

 

 

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 『むかしむかし、おおむかしの神様たちは、一人の女の人間を作りました。神様はその女に綺麗な箱を一つ渡し、「決して中を覗いてはいけない」と忠告して地上へ降ろしました。

女は地上で楽しく暮らしていましたが、もらった箱が気になってしかたがありません。ある日、どうしても我慢ができなくなって、箱を開けてしまいました・・・』

 

 

---------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 スプリングの柔らかいベッドに顔を預けて、私はじっと待っている。背中に感じるのは、温かい腕。その腕が柔らかくシーツに落ちるまで、規則正しい寝息が聞こえるまで、静かに目を閉じて。

 カミナシティの夜はまだ明るくて騒がしいけれど、この部屋は静穏。一人分の息づかいだけが流れている。そっと身体を起こしてみて、それでもあなたが目を覚まさない事を確認して、私はほうっと息をつく。

 アニキさんの像が建ったころ、シモンが私にくれた家。花の蕾を象った、この家であなたと過ごす夜はもう何度めでしょう。あなたが私の好みを聞いて、指示してくれたのだと聞きました。大好きなお家。特にこの寝室の内装はきれいな薄桃色で統一されていて、ここで眠りにつくたびに、とても幸福な気分になったの。あなたと眠りにつくたびに。

 起きあがって、ベッドの上で膝をかるく抱える。私の腰のあたりに、投げ出されたあなたの頭が見える。少し固い前髪をそうっとずらして、額まであらわにする。うっすらと口を開いて、子供みたいに安らいだ表情。宇宙へ行く前と少しも変わらない。あなたの寝顔を見ている、それだけで幸せな時間のはずなのに、私の口からこぼれるのは別の言葉。

 

 ・・・ごめんなさい、シモン。

 

 私が眠りにつくまで、いつも見守っていてくれたシモン。それがどんなに幸福な事だったか、初めて本当にわかりました。今日もずっと、いいえ、以前にも増して長くじっと、私が寝付くのを待っていてくれた。眠りの国に旅立つまであなたが見ていてくれる事が、今までどんなに私を安らげてくれたか。何の不安も持たずに夜へ漕ぎ出すこと。小鳥が親の胸に寄り添うような温もりが当たり前に側にあったのに。

 でも、もう、私に眠りは訪れない。


 反螺旋因子が覚醒し、メッセンジャーへと変貌を遂げたとき、私は人間としての機能を失った。眠ることも食べることもいらない。24時間、やすむことなく螺旋の星を監視し、与えられていたプログラムによって螺旋族に
------人間に、絶対的絶望を与えるために動き続けた。

 あの時、わかったの。何があっても、もう元の自分に戻れないこと。

 そうして帰還してからの数夜。同じ寝台にいながら、私はシモンを欺き続ける。あなたが眠そうになる頃合いを見て、眠るふりをする。優しい視線を背に受けながら、時にすい、と髪を撫でる指に泣き出しそうになりながら。

 薄い掛布の上から、自分の膝を抱きしめた。骨の感触、肉の弾力、にんげんとかわりのない、体。

 ね、前と一つも変わらない身体なのに、時々自分の境界線がぶれるのがわかるの。何の前触れもなく、自分と空間との境がなくなりそうになるの。空気の分子がひとつひとつ見える気がして、自分も同じ小さな粒の塊だと思った瞬間、身体が溶けていきそうになる、でも。そのたびに、あなたの顔が言葉がフラッシュバックして、私を整えてくれる。形を留めてくれる。

 あとどれくらい、それが保つでしょうか。わからないけれど。


 聞き取れないつぶやきを漏らして、傍らのシモンの頭が軽く動く。何を言っているのかしら。もぐもぐと口を動かしているから、何かを食べているのかも。頬を膝に預けながら、それを見守っていると自然に笑みが浮かんでしまう。

 眠れない身体は、その代わり時間をくれた。少しでも長く、あなたの姿を見ていられるように。夜、たったひとり私だけのそばにいるシモンを、飽かず眺められる時間を。これ以上の幸福を、私は望みはしません。あなたを欺く罪悪感を除けば、この身体に感謝してしまうほど。一秒でも長く、近く、あなたを見ていたい、触れていたい。

Posted by ふじみき - 2007.10.30,Tue




[主よ、永遠の安息を彼らに与え、]
[絶えざる光でお照らしください]
[正しい人は永遠に記憶され]
[悪い知らせにも恐れはしないでしょう]



 今なお荒野のままにあるその地に、赤く赤く、ひるがえる色が見える。その周囲を囲んで、7本の十字架の影。

数日前に一度だけ、ここはたくさんの人に囲まれている。星のために散った人たち。シティを粛々と進んだ長い長い国葬の列。

埋められたのは、超銀河ダイグレンに残っていた彼らの遺品。宇宙で最期を遂げた、その瞬間に身につけていたものは何一つ、地球に持ち帰ることはできなかったから。

宇宙艦に残されたのはごくごくわずかな身の回りの品のみだった。階級章、煙草の箱、上着、サングラス。それだけなら単なる日用品に過ぎないものたちが、一人分ずつ掘られた小さな穴に降ろされた。

だから天領地として当時のまま残された、この陵墓に在る骨は一人分だけ。夕陽よりも赤くはためくマント、それを結びつけられた刀の下。その骨の主を慕って集まった、彼らの------大グレン団の墓が、ここにある。

Posted by ふじみき - 2007.10.23,Tue

2.


つぶれた3人組を引きずって、比較的理性の残った4人は2階に上がる。

笑いの余韻の残るアイラックは、まだくすくすしながら、キッドの肩をしょって、階段からすぐの自室に消えた。ジョーガンとバリンボーはそれぞれカミナとゾーシィを抱えてくれている。この2人が残ってくれて本当に良かった。シモンではどちらも支えることができなかっただろう。

廊下を歩きながら、双子はドラ声を張り上げる。

 

「楽しかったな!」

「良く飲んだ!」

 

笑い声が寮中に響き渡った。胸が透くような声色。自分も心底から楽しかったから、そうですね、と相づちを打つ。

Posted by ふじみき - 2007.10.23,Tue


1.


 

 

「これでOKかな」

 

寮から少し離れた、小さなスーパーマーケット。シモンは一人で買い出しに来ていた。

夏休みと違い、冬休みは調理係のお爺さんも寮にいない。朝昼晩の食事は買ってくるか自炊するしかないのだ。もっとも、本来なら火気を扱う調理場は休みの間は使えない事になっている。シモンだけが、特別許可で使わせてもらっている。(毎日きちんと調理場を使っているという信用と、ニアの暗躍とがそこに働いているのだが)

はあ、と痺れる手に息をふきかけて、地面に置いたビニール袋をもう一度持ち上げる。中に入った大量のスチロールパックたちが擦れて悲鳴を上げた。ビニールは、肉肉肉のパックではち切れそう。買い置きが昨日一度に無くなってしまったので、こんなに補充するハメになってしまった。

点々と葉牡丹の植え込みが続く街路を、ほてほてと歩く。北風は今日も冷たい。ダッフルコートのボタンを首筋まで留めたくなった。せめて、と毛足の長いマフラーに口までうまってみる。

Posted by ふじみき - 2007.10.11,Thu

再放送一話感想だっ!
Posted by ふじみき - 2007.10.11,Thu


2.  <いつもおいしいものを 君が作ってくれる>

 

 

 四時限目の終了を告げるチャイムを受けて、高等部の教室が沸きたった。昼休みの始まりが喜ばしいのは、いくつになっても変わらない。がやがやと席を立つ音、弾ける笑い声。喧噪の中で目を覚ましたカミナは、机の脇にかかったカバンに手を突っ込んで、いそいそと中身を取り出した。

 水筒はステンレス製で、魔法瓶ほどではないが保冷も保温もそこそこ優れている。そっけない銀色の筒の中には、自家製の熱い麦茶がたっぷり入っているのだ。

 カミナは片手だけで器用に蓋をあけて、すぐさまそこに茶を注ぐ。右手は弁当の蓋にかかってすでに臨戦態勢だ。水筒からは温かい湯気と同時に香ばしい麦茶の香りがあふれ、何人かの生徒が振り返る。

 ここ一月半、昼休みを告げるチャイムと共に始まる一連の動作に乱れはない。購買や思い思いの場所で昼食を取るために出て行く生徒の居る中、自分の席から一歩も動くことなく、満面の笑みでカミナは弁当箱の蓋を開けた。

Posted by ふじみき - 2007.10.05,Fri



 シティを見下ろす屋上に、一つの影がある。白い上着をなびかせながら、手すりにもたれてぼんやりと街を眺めている風情だ。さらさらと風が一筋の前髪を揺らしている。

その背後から、静かな足音。

 

「珍しいわね、ロシウ。休憩中?」

「リーロンさん?・・・まあ、そんなところです」

「あなたがこんな風に日中に休むなんて、世の中平和になったものね」

「ははは」

 

Posted by ふじみき - 2007.10.04,Thu

今は何も言いたくないがこれだけは言わせてくれ。
ガ・イ・ナのみなさんお疲れ様です。ありがとうございました。本当に楽しかったです毎週。


・・・すいません、私どうしても腐女子なので、EDより後はなかったことにしても良いですか?
涙目orz 
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いや、やっぱり有りで良いです!良いことにしました。だってそれまでの過程があるもの。それに、グレンの世界では確かあれぐらいでもう老境なんだよね。だからああなるんだし。うん。
まあ、でもとりあえず
ロシウに容赦ないな!ひでえ!
泣いて笑って30分だよ!
もう一度見て、ゆっくり夜でも明日でも感想あげます。

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追記しました。つづきからどぞ。
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